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教員の研究Pick up!

教員の研究Pick up! Vol.3
未来創造工学科 情報・ソフトウェア系

教員佐藤 智治

「ヒトの脳における色情報処理を解明する」

自己紹介

 未来創造工学科 情報・ソフトウェア系の佐藤智治です。出身は一関市(といっても私が産まれた当時は別の市町村)です。中学卒業後、仙台電波高専(現仙台高専広瀬キャンパス)に進学しました。進学のときは一関高専も学校見学に行きましたが、当時の私は無線技術者になりたかったのと、コンピュータを触りたかったので仙台電波高専に進学しました。仙台電波高専では専攻科まで進学し、その後、豊橋技術科学大学大学院工学研究科に入学しました。そこで今の研究分野に出会ったのですが、最初は応用研究のつもりがどんどん基礎研究の方にのめり込みました。

研究の紹介

 私の研究はヒトが外界から得た情報に対してどのように反応するかを扱う「心理物理学」という分野です。例えば真っ暗な部屋の中でディスプレイから出る光の強度を少しずつ明るくし、観察者に光が見えたかどうか報告してもらいます。ある光強度になった時、観察者が「見えた」と報告するはずです。この結果からヒトの目がどのくらいの光強度を検出可能なのか明らかにできます。このように、光強度のような物理量と「見えたかどうか」というヒトの行動を結びつけ、ヒトの感覚を理解するのが心理物理学です。
 私は特に色について研究しています。数年前に話題になった「The dress」(Webで検索してみてください。)は同じ画像を見てもそれがどう見えているかは個人によって異なります。The dressの見え方の個人差から、ヒトが目から得た情報をそのまま見ているのではなく、様々な情報処理をして最終的な見え方を決めていることがわかります。
 画像をもっと単純にして、どの色の組み合わせが似ている色なのか調査しようとすると図1のようになります。この図は補色関係にある色ノイズの中にピンク色の正方形が埋まっています。この画像を観察者に見せ、観察者には色ノイズの中にピンク色の正方形があるかどうか判断してもらいます。正方形が似た色の中にあるとき(図1(b))は見つけづらく、違う色の中にあるとき(図1(a)、(c))は見つけやすいはずです。ヒトの色情報処理としては、見つける色と周辺のノイズが同じセンサ・あるいはメカニズムで処理していれば検出が邪魔され、別メカニズムで処理していれば検出に影響はないはずです。周囲の色ノイズを調整することでどのくらい色が似ているとピンク色の検出を邪魔するのかがわかります。また、見つける色を黄色や緑などに変えて実験していけばヒトが持つ色の種類がわかります。

図1. 実験に使用する刺激の例: 見つける色正方形とノイズの組み合わせによって色正方形の見つけやすさが変わる。(a) 白–黒ノイズ、(b) 赤–緑ノイズ、(c) 青–黄ノイズ。

学生へのメッセージ

 自分の興味があることに時間をかけて突き詰めてほしいと思います。授業・実験実習で聞いたことや習ったこと、講演会に参加して興味を持ったことを自分で調べたり実験したりして、その過程で自ら考えて実行する力をつけてほしいと思います。高専には様々な実験設備・環境があり、自分で手を動かす機会が多いと思うのでそれを活用して欲しいです。また、興味があることを見つけるために様々なことに挑戦してください。