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教員の研究Pick up!

教員の研究Pick up! Vol.2
未来創造工学科 化学・バイオ系

教員渡邊 崇

「長持ちマイクロバブルを使った魚介類の効率的な養殖・活魚輸送システムの開発」

自己紹介

 未来創造工学科 化学・バイオ系の渡邊崇です。出身地は伊達政宗ゆかりの地、宮城県大崎市岩出山です。大学・大学院在学中は哺乳類の酵素の研究を専門に行ってきましたが、学位(博士)取得(10年前)を機に、自分の好きな分野の研究をとことんまで追究したいと思い、魚類や貝類を育てる研究へ舵を切り現在に至っています。渡邊研究室ではニジマス50匹、アイナメ10匹、エゾアワビ5匹を畜養、養殖しており(写真1,2)、全国の高専の中でも人間以外の動物の数が最も多い研究室だと思います。担当している授業・実験は、4年生の生化学、微生物工学、4、5年生の生物実験、専攻科生の遺伝子工学ですが、学外でも看護専門学校の学生に対し生物学を教えています。趣味は運動で、1日あたり平均15000歩以上の歩数、平均5 km以上のジョギングを自分に課しています。ジョギングは気分転換にぴったりなだけでなく、煮詰まっていた研究のアイデアが突然浮かぶこともあり、私のライフワークになくてはならないものになっています。

写真1(ニジマス)

写真2(アイナメとアワビ)

研究の紹介

 自己紹介のところでも触れましたが、私は魚や貝を育てる研究をしています。海の魚介類であれば、多くの人は内湾で育てることをイメージするかも知れませんが、本研究では「陸」(実験室や実習工場内に設置した水槽)で行っています。これを(閉鎖循環式)陸上養殖と言います。陸上養殖は危険な海に出る必要がなく、津波、大雨・台風、汚染物質の流出の影響に左右されることもなく、安定的に一定品質の生産物を得ることができますが、電力コストが高いことが大きな欠点です。電力コストの内訳をコストの高い順に挙げると、水温維持>>酸素供給≒飼育水の循環>飼育水の殺菌で、このうち一番高い水温維持については、工夫すれば80%以上のコストカットが可能です。そこで次に問題になるのが酸素供給にかかる電力コストです。渡邊研究室では、直径が髪の毛の太さと同じくらいの小さな気泡、“マイクロバブル”によってこの電力コストをカットできないか検討を進めています。その結果、 1時間以上に渡って酸素供給ができる“長持ちマイクロバブル”(通常のマイクロバブルは数秒~10分程度の寿命)を上手に活用することで、酸素供給にかかる電力コストを80~90%カットできることに成功しています(写真3の3トンの陸上養殖システムによる検証結果)。さらに、長持ちマイクロバブルを活魚輸送へ展開する研究も並行して進めています。
 きちんと利益のあがる陸上養殖、三陸の魚を生(活)きたまま世界に送り届けることを目指し、日々研究に邁進しています。

写真3(3トンの陸上養殖システム)

学生へのメッセージ

「考える」質の高い実験・研究を行ってほしいなと思っています。高専のいいところは、考えながら実験・研究する環境があることです。知識としてだけ身につけた技術は、実行力に弱く、すぐ忘れてしまいますが、試行錯誤しながら苦労して身につけた技術は、体に染みつきます。将来,ある職場のベテランになり、鳥の目(多角的な視点)を持てるようになったとき、高専で得たこの技術が必ず役に立つはずです(発見&発明には発想力だけでなく、それを検証する能力も必要)。5年生以上の皆さん、自分のアイデアを取り入れて卒業研究や特別研究に臨んでください。