リモートセンシング画像解析に関する研究
●SAR衛星画像
近年、地球環境監視や資源探査の有力な手法として、人工衛星画
像データが注目されています。
人工衛星では、瞬時に、広域的に、また一定条件で周期的に地表
付近の光反射成分や赤外線、マイクロ波等の電磁波データを得るこ
とができます。その結果、地表や海表面における温度分布等をはじ
め、さまざまな物質の観察や、時間的変化を調べることができます。
こうした一連の計測、情報処理技術のことを、リモートセンシング
と呼びます。
私どもは、衛星画像として資源探査衛星ふよう(JERS-1)のマイ
クロ波レーダ画像を取り上げ、画像の処理方法や利用方法の研究を
行っています。
論文用コピー・、参考資料・用語等
JERS-1マイクロ波SARレーダは波長23cm(Lバンド)で、この波長は、
主に地形および地質成分の資源探査のために利用されるものです。
SARとは合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar)の略で、
衛星自らの進行によるドップラー効果を利用し、分解能の高い画像再生
を行う方式です。マイクロ波レーダは昼夜晴雨問わず利用でき、雲や、
少しの表皮を透過してしまい、資源探査のみならず軍事や惑星探査で
も関心を集めています。
JERS-1の場合、衛星高度は578kmで、ラスタ画像(点情の濃淡で
映像を表現)のサイズは6000*6400*2バイト構成になっています。
1つの点は、地上分解能12.5m(処理レベル2.1の場合)を意味しま
す。約600Kmというと、だいたい東京−青森間の距離ですが、その
距離で、物体が12.5mの粒状に見えるというのですから、たいへん
高性能な電波望遠鏡が宇宙にある、と考えていただければよいです。
私達は、この画像利用のために、5万分の1地形図を基準として精
密な幾何変換を行ったり、画像の輝度の統計調査をしたり、さらに、
ある構造物に着目して、なぜ衛星画像がそのように撮影されるのか
を調べています。
SAR画像例
●幾何補正
SAR画像は、山岳地形のように起伏が激しいと、ファアショート
ニングという幾何歪現象が現れ、地図のような位置に画像
が現れません。甚だしいときは、レイオーバーといって、遠くの
地点のデータが近くの位置にみな集まってしまい、せっかく採取
したその地点でのデータが信用できなくなります。SARにはこ
のように、使える場所とそうでない場所があります。
起伏の少ない平坦な地形では、SAR画像をそのまま回転や平行移
動して、盛岡市街付近の例では、6.4km*6.4km区画では約3ピクセ
ル以下の位置誤差(約30m位置誤差)で位置あわせができたようで
す。一関近辺でも試みましたが、まだ正確な評価は終っていません。
山岳地形のように起伏差が大きい場合には、位置変換するサイズ
をもっと小さくしないと、精度よい幾何変換ができないでしょう。
つまり、SAR幾何変換では、
切り出す画像サイズ=f(衛星位置、標高値の傾斜度,精度目標)
という関係式があるのではないかと推測し、調査を続けています。
画像がもともと雑音が多く不明箇所が多く、難しいですが・・・
●後方散乱係数
SAR画像データの輝度は、電波の跳ね返り成分の大きさを示します。
これを後方散乱波といい、その値を後方散乱係数、シグマノート、
NRCS値 ともいいます。
この後方散乱の特性はまだよく知られていません。たとえていえば、
レントゲン写真映像が得られているが、白く光っているものが、何の
器質変化(病気)を意味しているかわからない、というのに似た未解
決の分類学があります。
かつて、盛岡市付近の牧草地を中心にNRCS値を調査しましたが、
その経験をもとに、さらに岩手県南部−宮城県北部の調査を行い
ました。
調査は、ある地学項目(水田とか住宅地)に対して、その項目領域
の画素値がどんなふうに分布しているかを調べます。分布は、住宅地
のような高輝度画像部分以外は、正規分布になります。分布形状がそ
うなるために、平均、分散(標準偏差)の統計値で、地学項目が表現
できるのではないか、と推測しています。しかしそれを自信をもって
いえるためには、なお数多くの試行実験の積み重ねが必要です。
もし地学項目が統計値で代表値表現できるなら、それからの差異は、
その地学項目でないか、また同じ地学項目なら、なんらかの理由で電
磁波特性が変化したもの、と考えることができます。つまり、地上項
目分類と、項目を一定にしたときの各種の物理特性の抽出に利用でき
るのではないか、(特に含有水分など)と推測しています。
●構造物探査
以上の検討は、広がりのある面状の統計調査ですが、画素をひとつ
ひとつ調べる研究分野もあります。
大型構造物、ダムやビル、橋梁等は、その内部材料物性や寸法、レ
ーダ周波数、入射角により独特に光る画像を形成します。ただし、映
像にはスペックル雑音という粒状の点が多く混入し、不明さを一層増大
させます。
たとえば盛岡市の四十四田ダムでは、そのダムの形通りに映像が
現れず、ダムの前の鉄筋パイプのほうが強く光ったりし、なにか大型
構造物があるという予想はできますが、形の特定がうまくいかないの
です。
一般にレーダー入射方向に垂直に面した金属物体、たとえば
高速道防音フェンスや、ガス貯蔵タンクなどは、スポット状に強く
光ります。
しかし入射方向に面していない金属物は、あたかもそこに何も無いよう
な画像になります。金属だから強く光るとは一概にはいえません。
一関付近では、衣川村の構造改善区域の農道が、その寸法や傾斜の
せいでしょうか、たいへん強く光りました。実物は単なる土壌ですが、
おそらく電波波長の整数比の長さで、しかも入射角度もちょうどよか
ったのか(ブラッグ散乱)、新幹線橋脚をはるかに超える、強い反射
がありました。いずれ一言では整理できない複雑な因果関係がありそ
うです。
SAR画像は、今日ではだいぶわかったことも多いと思いますが、上に
紹介したように、まだよくわからない部分も多いのです。しかも、 L
バンドの電波は、アマチュア無線をしている方はよく経験すると思いま
すが、建物の中を平気で透過します。建物や地面の表面に加えて、さら
に内部の物理特性の反射も重なり、金属アクセサリをいっぱいつけた服
を着てレントゲン写真を撮ったかのような問題を抱えております。
SAR画像は、さまざまな透過写真を得る有力な手法であることは疑い
ないですが、ランサットやノア映像のように、実用段階には至っており
ません。
●SARは未解決の問題が多い
一関高専では、以上紹介したように、いろいろな面から研究調査をし、
ひとつでも明確な現象や事実が定着するのなら、逆にその現象を画像か
ら差し引いて、さらにこまかく探査をすすめるという姿勢で、取り組ん
でおります。現在は、調査記録の報告を行うことが精いっぱいで、定着
できるほどの知見は得られていません。
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本記事は、(財)リモートセンシング技術センターから、研究目的利用
データにもとずき、研究した成果の一部を公表したものです。
「衛星データ所有:通商産業省/宇宙開発事業団」
「衛星データ提供:宇宙開発事業団」
<参考/引用>
(財)資源観測解析センター 合成開口レーダ(SAR)
資源探査のためのリモートセンシング実用シリーズ(5)
図解リモートセンシング 日本リモートセンシング研究会編 社団法人日本測量協会
・・・・・衛星データ利用を、より多くの人に・・・・・
連絡先 一関工業高等専門学校 機械工学科 佐藤清忠