一関地方振興局管内に於ける松喰い虫被害デ−タ検索表示システムの構築 平成5年度 卒業研究 国立一関工業高等専門学校 電気工学科 佐藤 天彦 吉田 弘樹 < 序 論 > 最近の、宮城県・岩手県周辺に於ける松喰い虫被害は、一関地方振興局管内が特に多く今回、卒業 研究として一関管内の松喰い虫被害の状況をまとめ,graphic化する事は大きな意義を持つも のと思われる。 そこで,今年度はその準備段階として,一関地方振興局管内(一関市、平泉町)に於ける,昭和6 2年度から平成4年度までの被害状況の資料をLOTUS1−2−3上に整理し,そのデータファイ ルを基に,C言語により,簡易graphic表示プログラムを作成する事を目的に研究を進めてき た。 1松喰い虫の生態と,その被害の状況について 松は温帯や暖帯の地域に自生する植物であり,我が国の森林を代表する林相のひとつとなっている。 主に海岸や平地の丘陵に多く生育し,建築等での木材資源をはじめ防風林や風致林として我々の生活 を守り,又,潤いを与えてくれるものとして重要な役割を成してきている。その松の木が近年"松喰 い虫"と呼ばれる虫により侵されると言う被害が発生している。 (1)"松喰い虫"とは... (病原体) "松喰い虫"とは,一般的に呼ばれている名称であるが,実際にこのような名前の虫が存在する訳 ではなく,正式には,マツ類の枝や幹等に穴を開けて進入し,樹皮下を食害する穿孔性甲虫類のこと を総称したものである。 (森林病虫害等防除法第2条第1項及び森林病虫害等を定める政令による) ※ その中でも,松喰い虫被害にとって主となる虫は,"マツノマダラカミキリ"と呼ばれる虫 である。 しかし,現在では,激害型松喰い虫被害の真犯人は,マツノマダラカミキリそのものではなく,そ の虫を媒介として運ばれる"松材線虫(マツノザイセンチュウ)"と呼ばれる長さ1mm足らずの寄 生虫であると言う事が,判明されている。 (松喰い虫被害対策特別措置法による) ※ マツノマダラカミキリと松材線虫の関係と,その被害の発生過程については,付録のOHP 1(松喰い虫被害発生の過程)を参照のこと (2)松喰い虫の被害の状況について 松くい虫被害の症状としては,最終的には付録のOHP2下部写真のように,針葉が萎れたり,赤 褐色に変色すると言うような外観的な変化が見られるようになるが,それより先に樹脂の流出量が急 激に減少すると言う現象が起きる事が,明らかになっている。 これについては、付録のOHP3を参照すれば解ると思うが、松の樹皮に目抜き(シイタケの種駒 を植え付ける時に使うもの)で、直径1cm位の穴を開けた時、1時間位経つと、普通の松の木は、 樹脂が流れ出すのであるが、松喰い虫によって侵されている木からは、ほとんど流れ出さず、又、被 害がかなり進んでいる木では、全く樹脂が流れ出さないこともある。 ここまでに述べたような形で被害は起こるのであるが、この被害の状況を、全国的な規模で考えた 場合には、一関市周辺地域の被害は、現時点においては、それほどでもない被害量であると思われる。 そこで、松喰い虫の被害を全国的な規模で見た場合の、状況をまとめると、付録の、OHP{都府 県別の被害量の推移(被害材積)}を参照すれば解るが、昭和62年の段階においての最高被害量は、 島根県の84.7[千立方メートル]となっている。又、別の付録資料(都道府県別被害量の平成2 年度分まであるもの)によれば、その後の平成2年の段階においての最高被害量は、広島県の75. 4[千立方メートル]となっている。 これらに比べて、宮城県・岩手県に於ける被害量は、それぞれ、14.3[千立方メートル]、 10.0[千立方メートル](昭和62年度)、18.6[千立方メートル]、8.5[千立方メー トル](平成2年度)となっている。故に、全国的な面では、たいした被害量ではないと言う事が判 ると思う。しかし、被害が大きくなった後では、防除・駆除も大変になると思うので、被害が少ない うちに対策を取る為にも、今回の研究内容が、今後の対策事業の役に立つ事を望むものである。 ※ その他、上記資料によって、東北地区内県別、岩手県内地方振興局別被害量をまとめたグラ フは、付録OHP4、5を参照のこと。 2 メッシュ図による被害木データの入力過程 さて、この項から、私たちが卒業研究として実際に行った作業についての説明に入る。この全体概 要については、付録のOHP6を参照して戴きたい。この内容の詳細を説明すれば、まず、一関地方 振興局で調査・駆除された、平成2年〜4年までの管内全体の被害木本数をまとめたメッシュ地図を 借りて、その図表の形式で管内地図をLOTUS上に再現した。そして、その地図上に被害木本数を a、b、cの記号形式でまとめた。その図表の形式及び記号形式の内容は次の通りである。 ・図表形式:縦34マス、横44マス (1マス;1000m四方、更に内部を4分割してある。) ・記号形式内容:a:1〜2本 ,b:3〜4本 ,c:5本以上 それから、それ以前のデータも必要と思い、再び地方振興局の方から昭和62年〜平成元年までの "森林病虫害等防除事業"の実績書を借りてきた。しかしこのデータの中で花泉町のデータに関して は、最初に用いたメッシュ地図に対応する地図が数少なく、入力するには事足りないと考え、今年度 の作業からは外す事にした。それから、この書類のデータ形式は平成2年からのメッシュ地図とは異 なり、具体的な数値のままの資料だったために直接、記号形式では入力せず、その具体的数値のまま で入力し、後からLOTUS上でプログラムを組みa・b・cの記号形式に変換した。 ここまでの過程で、被害データの入力は終了したのであるが、この次には、これをgraphic 表示用のデータにするために、k3formatを用いて変換した。ここで、k3formatとは、 LOTUS形式でまとめたデータをASCII形式に変換するための変換プログラムである。又、こ こまでのデータでは、被害木本数をa・b・cの記号形式で表示していたが、このgraphicを workstationや、macintoshで使用した場合、この様なsystemではbin ary形式によってデータが処理されている為、処理形式が異なると言う事で、それらの処理形式を 統一するために、VZエディタの変換機能を用いてa、b、cの記号形式をそれぞれ1、3、5の数 値形式に変換した。又、k3データに変換した時点では、データの無い部分の表示が*マークで表さ れているが、この部分についても先の方法と同様にして、0の数値形式に変換した。但し、一関地方 振興局の管外については*マークの形で表現してある。 以上のような過程でgraphic表示をするためのデータファイルを作成した。 (最終的な拡張子は.datにしてある。) 3 真滝地区藤の沢に於ける現地視察について 平成5年9月1日、私達は、地方振興局の林業課の皆さんと共に、松喰い虫被害とその防除の状況 を視察しに、真滝地区の藤の沢という場所に行ってきた。そこに行っての、私達の第一の目的として、 今年度は、測定のみで処理は出来なかった、分光計による分光特性(気温、湿度、波長、光量)の測 であったが、その他にも、現地に赴く事により、いろいろな被害や駆除の実態が分かったと思う。例 として、松喰い虫を防除する方法の一つに、松喰い虫(松材線虫)の天敵と言われる"赤げら"の巣 箱を設置していると言う事があった。現地に行くまでは、駆除の方法は木を切って、それを消却する 位だと思っていたので、やはり"百聞は一見に如かず"だと思った。 ※ この現地視察のようす(分光特性の測定)は、付録のOHP2上部を参照して戴きたい。 ☆☆ Cプログラムによるgraphic表示については、付録のBを参照して戴きたい。